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4月, 2022の投稿を表示しています

今できるささやかな「地域支援」

静岡銀行と名古屋銀行の包括業務提携の狙い

   静岡銀行と名古屋銀行が、包括業務提携を結んだと発表した。 「提携効果を高める観点」から、今後、資本提携(株式の相互取得)についても協議を行うとのことだ。   報道の中には、『経営統合』ではなかったことに物足りなさをにおわせるものや、将来的な統合の憶測など、どうしても統合に結び付けたいと思われるような記事も垣間見られる。   しかし、筆者は、両行にその考えはないと思っている。   両行トップが目指すのは「自行のビジネスモデルの確立」 両行トップは、異口同音に、低金利下では“ブローカー業務(金貸し業務)”を基本とする旧来型の銀行のビジネスモデルは成り立たないとの認識の下で、自行が単独で生き残るためのビジネスモデルの確立を基本的な考えとしている。   静銀・柴田頭取は、「統合・合併は、新たなビジネスモデルを実行する“形”の一つであり、各金融機関が最適な方法を選べばいい。ただその前に、自行のビジネスモデルをどうしたいか考える必要がある」と、“我が道を行く”姿勢を強調し、統合・合併については“それが必要だと考える銀行はそうすればいい”と、完全に他人事だ。少なくとも、自分から相手を探すような気配は微塵も感じられないが、これは昔から変わらぬ、静銀の基本姿勢だ。 一方、名古屋銀行・藤原頭取は、「今は顧客の経営改善を全力でサポートし、(銀行の与信費用を抑えるためにも)融資先の経営を少しでも良くすることを考えるべき時で、統合等、内向きの作業に時間を費やすべきではない」と、やはり “生き残りを考えたいのなら、強くなれ”とのスタンスだ。斜に構えて捉えれば、時限的ととれる節もあるが、統合や持ち株会社化について、“それも一つの選択肢だが、身の丈に応じたやり方を考えればできることは多い”とも仰っており、『経営統合』を目前の課題と考えている様子はない。   両行とも、 「統合ありき」でない、地域に根ざしたビジネスモデルの 構築によって自立することを基本と考えていることから、悪い意味での時流に乗ることはないだろう。   静岡銀行の特徴から見た「業務提携」の狙い 静銀は、規模、収益力など一般的に比較対象となるあらゆる数字で地銀トップクラスに位置する地方銀行業界の看板銀行だ。 融資審査が厳格であることから、巷では「シブ銀」と揶揄さ

円安の「正体」は、「日本売り」!?

  急激な円安が止まりません。 3 月上旬は 115 円を挟んで推移していたドル円相場は、中旬以降、一気に円安の流れを加速し、 4 月 20 日、ついに 130 円台目前の水準に達しました。   巷では、 この原因は日米の金利差の拡大 にあるとされています。   現在、米国ではエネルギー価格の上昇に引きずられて物価が高騰しています。 FRB (米連邦準備制度理事会、日本の日銀に相当)は、これを抑え込むために金融の引き締めにかかり、政策金利を 0.25 %引き上げました。 これによって、金利の低い円を売り、高いドルを買うというお金の流れが加速しているわけです。   しかし、市場において、米国の利上げは「サプライズ」ではありません。   今後のウクライナ情勢の行方次第では方向転換の可能性も残されてはいるものの、米国では、今年中に 7 回の利上げの可能性も示されており、年後半には 2 %水準にまで達するとも予想されています。 3 月の利上げについても、「 0.25 %では効果が薄い。一気に 0.5 %の引き上げもある」との声が主流であったこともあるのです(それこそ、ロシアによるウクライナ侵攻がなければ、 0.5 %の引き上げが実施された可能性は十分にありました)。 一方の日銀は、ご存じのとおり、現在の金融緩和策を継続する方針を表明し続けています。   つまり、日米の金利差の拡大は、もう今年の 1 月、 2 月の段階で誰も疑う者のないレベルで予想されており、この時点での関心事はそのスピード感、特に「初回を 0.25 %にとどめてくるか、一気に 0.5 %でくるか」だったのです。   にもかかわらず、 FRB 会合の 1 週間ほど前から円安がはじまり、 0.25 %という予想通りの利上げに留まったにもかかわらず、“あく抜け感”を見せることなく、円安が加速している現在の状況は、「日米の金利差拡大」だけをその理由とするには、かなり無理があると考えざるを得ません。   政策的対応ができないことは見透かされている? これまで「円安は日本経済にとってプラス」(これがやや旧来的な考え方である点については、今は目をつぶりましょう)との姿勢を貫いてきた日銀・黒田総裁も、さすがにわずかひと月で 10 %を超える下落を見せた

普通の家庭でも「遺言書」を書くべき理由とその作成要領

   「遺言書なんて…、そんな大袈裟なことをするほどの財産はありませんよ」。  相続のご相談において、よく聞かれる言葉です。  遺言書には、 l   相続トラブルの大半を占める遺産分割トラブルの回避 l   特定の人に特定の財産を引き継ぐ自分の意思を伝える といった意義があることは広く知られていますが、今後の相続においては、 l   第三者の介入により相続が紛糾してしまうリスクの回避 という点が、これまで以上に重要な意味を持つようになると考えられます。 遺された家族が無事に相続を乗り切るための手助けとして、 是非、その作成を考えてみましょう。   遺産分割トラブルの回避 相続 といえば、映画やドラマの中では、多額の遺産をめぐって遺族同士で揉める “争族” が描かれることも少なくありません。しかし、私の経験からは、多額の遺産が見込まれる人は、万全の事前準備の下でスムーズに手続きが進むことのほうが多く、トラブルは、「たいした“財産”もないし、うちに限ってそんな心配はない」と高を括り、特段の準備をしていなかった家で起きることのほうが多いように思います。 実際、最高裁判所が毎年刊行する『司法統計』によると、例年、家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割事件(調停や審判)は 1 万 2 千件前後に及びますが、その約 3 / 4 が、遺産総額が 5 千万円以下の案件( 1 千万円以下に絞っても全体の 1 / 3 強)となっています。 “裁判沙汰”になっている相続事案の大半が、遺産総額がそれほど大きくないケースなのです。そして、 そのほとんどが 分割トラブルです。 「相続財産と呼べるようなものが自宅しかない」ケースはその典型例ですが、相続財産に占める実質的に分割が難しい資産の割合が大きい場合、これを相続する人と、他の相続人との間に大きな差が生じることになります。また、家業を営んでいるケースでは、自社株や個人名義となっている事業用資産等を跡取りに集中させることが望まれますが、この結果、他の相続人に相続させる財産がなくなってしまうこともあります。 こうした不均衡が、例えば「兄がすべてを相続し、自分には何もないなんておかしい!」といった不満となり、相続トラブルに発展してしまうことが少なくないのです。 あるいは、相続人それぞれの事情や考え方によ