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6月, 2020の投稿を表示しています

今できるささやかな「地域支援」

キャッシュレス化が一極集中と富の集中を加速する!?

キャッシュレス化の話題が続いたついでに、経営・地域コンサルタントの立場から、現在のキャッシュレス化に向けた動きが、中小零細企業や地域経済に大きな打撃を与えかねない点について触れておきたい。   まだ「コスパ」が認められる状況ではない 『キャッシュレス決済の「影」』でキャッシュレス化によって販売者の負担が増加する点にも触れたが、一方で、キャッシュレス化が「販売店の売上アップにも結び付く」という意見もある。 機会損失の回避(お客の手持ちの現金が不足していてもキャッシュレス決済での販売が可能)に加え、決済事業者と連携したプロモーション活動による販売促進も可能であることがその大きな理由だ。 ただ、ここに目新しさはない。 この手の話は、クレジット会社による加盟店勧誘などの場面で何度も聞かされた話であり、中には具体的なシミュレーションを行ったことのある店などもあるだろう。こうした検討の結果、導入メリットがないと判断した事業者が、今、キャッシュレス決済を導入していない事業者なのだ。 この点、キャッシュレス信奉者の主張が正しければ、非導入事業者は淘汰されているはずだが、実際には、総体的に見てもキャッシュレス決済未導入事業者が不振ということはない。逆に、導入事業者の中には、その取扱量が極めて少額(「月間1~ 2 万円」などということもザラ)で、導入費用の回収さえできそうもない、あるいは従来からの現金顧客がキャッシュレス決済を利用するようになり手取り(利益)が目減りしたことを嘆く事業者もいる。 もちろん成功事例もあるが、中小零細企業においては、こうした事実上の失敗例も多く、特に地方都市ではこちらが多数派なのだが、このことはほとんど語られない。   要するに、事業者目線でのキャッシュレス化の是非は、その導入によって低下する利益率(決済手数料のために経費が増え、利益率は低下する)をカバーして余りある売上げの増加、あるいはコストの削減によって、利益額を増やせるか否かにかかっている。 これを踏まえて、未導入事業者を簡単に類型化してみよう。   キャッシュレス未導入事業者の類型 まず、業界全体としてキャッシュレス化が進んでいないのは、 役所 、 学校等 、 医療・福祉機関 (病院や福祉施設など)などだ。 ※    役所では、『ペイジ

これでいいのか?「キャッシュレス化推進策」

安倍首相は、 6 月 16 日、『未来投資会議』において「銀行間手数料」の引き下げに向けた検討を指示した。これが「キャッシュレス決済拡大の障害になっているため」らしい。 多くのメディアも「一般利用者の負担が軽減される可能性がある」と好意的だ。 中間コストである「銀行間手数料」が引き下げられれば、商品等の値下げにつながる可能性もあるとの認識のようだが、これは完全な事実誤認だ。   振込手数料はネックになどなっていない! 振込手数料は、金融機関ごとに多少の差はあるものの、最大でも 1 件 800 円だ。 『未来投資会議』資料では 300 円が例示(下図)されたうえで、「キャッシュレス決済を提供する店舗への売上金の入金も銀行振込によって行われているため、振込手数料の負担がキャッシュレス決済普及の障害となっている」と記している。 (令和 2 年 6 月、未来投資会議「基礎資料」より)   しかし「キャッシュレス決済を提供する店舗への売上金の入金」は、売上げ明細ごとに行われるわけではない。 仮に、毎日、決済代金の清算が行われていたとしても 1 日 1 回、信販、クレジット系に至っては、月 1 回が主流だ。しかも、振込手数料のうち今般懸案の「銀行間手数料」は、「 117 円 / 回」(振込金額次第では 162 円 / 回)だ。 もう一度言うが、これは最大でも 1 日 1 回限りの手数料だ。 仮に、ここで 60 円の劇的削減に成功しても、コンビニ 1 店舗当たり 1 日の平均販売点数(約 3,000 点)で単純割すると、 1 点当たり 0.02 円、平均来客数(約 800 人)で割っても 0.075 円と、 1 円にも遠く及ばない金額だ。月 1 回清算のクレジットを基準にすれば、 1 銭にさえ満たない金額になる。 到底、「利用者の負担軽減につながる」ような水準ではない。   もちろん、加盟店の立場では、手数料は、たとえわずかでも安いほうがいいに決まっている。しかし、こうした費用よりも得られるメリットのほうが大きいと判断したからキャッシュレス決済を導入したはずで、せいぜい数百円の振込手数料が「ネック」になるようなら、その

キャッシュレス決済の『影』

日本は現金決済王国であり、キャッシュレス分野においては後進国だと言われている。 いまやキャッシュレス決済が世界の潮流であることは間違いなく、早晩、キャッシュレス社会が到来することは間違いなかろう。しかし、今、これを加速させることが我が国にとって有益なのかについては、議論が尽くされていないように思う。   何をもって、 “ キャッシュレス後進国 ” なのか? 世間では、諸外国はみなキャッシュレス化が進んでおり、こんなに現金が使用されている国は日本だけだ!との声が大きい。しかし下表を見れば、諸外国の後塵を拝してはいるものの「日本だけ」は正確ではなく、「いまや諸外国で現金決済は稀」が誇張であることがわかる。 日本同様、貨幣経済が高度に発達しているドイツの普及率は低く、日本と似たような水準にある。『 Pay Pal 』を生んだアメリカでさえ、キャッシュレス決済比率は半数程度に過ぎない。 25 ドル以下の小額支払いについては現金比率も高く、逆に高額になると、まだまだ小切手(我が国の定義ではキャッシュレス決済手段には該当しない)が主流だと聞く。 そもそもアメリカは、大手クレジットカードブランド発祥の地で、四半世紀以上前から「非現金化」が進んでいたことを思えば、「支払いの 2 回に 1 回はキャッシュレス」と言われても、「昔からそうでしょ?」というのが率直な感想だ。 (サンフランシスコ連邦準備銀行調べ) 日本政府は『 Fintech ビジョンについて』の中で、キャッシュレス決済をクレジットカード、デビットカード、電子マネーによる決済と定義している。 この定義を踏まえて現在の日本を見れば、デビットカードだけはマイナー感が否めないが、クレジットカードについては、現役世代で「持っていない」、「使ったことがない」という人は、天然記念物級の『激レアさん』と言ってもよく、その利用についても、少なくとも“街”であれば、全国どこへ行っても使えると考えるのが普通だ。電子マネー・スマホ決済(以下、単に電子マネー)も幅広く普及しており、 IC カードが 2 , 3 枚財布に入っている、あるいは決済アプリが 2 , 3 種類ダウンロードされている方も多いの

本当の「敵」を再認識させられた今日の相場

  株式の乱高下が止まりません。   本日の日経平均は 1,051 円高、東証一部銘柄の 97 %が上昇するという驚異的な上げ相場で、前日の 774 円安を取り戻しておつりが出ました。 前週後半から 3 営業日続けての下げが続いていたとはいえ、調整という言葉では片づけられない爆謄ぶりです。   上昇要因としては、 FRB による個別企業の社債購入と、トランプ政権が 1 兆ドル規模のインフラ投資計画を検討中だという報道です。この 2 点、ポジティブ材料には違いありませんが、いずれも「わかっていた」「予測できていた」ことであり、サプライズとは言えません。 なのに、この爆謄です。   日経平均でいえば 3 月 19 日の底値 16,358 円から 6 千円上げたことになりますが、上昇要因は、全世界規模での流動性供給によるカネ余りと、コロナ終息を前提とする各国の経済対策効果に対する期待です。 「噂で買う」のがマーケットであることを理解しつつも、まだ地球規模では感染拡大が続いている中、日米とも7~ 8 割の戻りを実現しているというのには驚かされるばかりです。   こんなファンダメンタル完全無視のわけのわからない相場は初めてです…。 リーマン・ショックの時でさえ、こんなに困惑した記憶はありません…(笑)   今、冷静に世の中を振り返ってみれば、 お互いの国の威信がかかっており、落としどころの見えない米中貿易戦争 核廃棄の是非をめぐり、同じく落としどころの見えない北朝鮮(地政学的)リスク (夕刻、孤立を深めかねない「南北共同連絡事務所爆破」の報道がありました!) 頼みの外交カード「北朝鮮との橋渡し役」の地位を失った韓国文政権の行方 これにも関係する慢性的な「ウォン安」不安 (現在の日韓関係を見れば、有事に日本が助ける可能性は低いでしょう) 中国の香港統治問 題 など、コロナ以外にも未解決のリスクがあるのに、市場は何とも強気です。   そうは言っても「相場は真実」ですから、今は短期トレードを原則にという皆さんのご意見どおりに向き合っていくしかありません。   それよりも、私が今日注目したのは「パーク 24 」の値動きです。(個別銘柄の話をするつもりはありませんが、どうせわかることですし、批判ではない

日本は、本当に「オーバーバンキング」なのか?

緊急事態宣言の解除から 3 週間が経過しようとしている。   新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う自粛によって凍りついてしまった経済活動の再開に向けた動きが、今、全国ではじまっている。その中で、地域の中小零細企業を支えるべき地域金融機関の存在意義が、改めて問われている。   コロナショックでわかった地域金融機関の重要性 ここまでも、地域金融機関サイドからは、「この先の展望も不透明な中、正直、片目、両目をつぶった緊急融資も相当やってきた」といった、地域の企業等のために出血覚悟の対応を行ってきたとする声も聞かれる。一方、メディアなどでは、今般のような事態における支援は政府系金融機関等の役割との姿勢から、「腰が引けていて、その対応は十分ではない」などの論評も見られる。 どちらが真実なのか、現場に足を運ぶことができない今の状況の中では検証する術もないが、 5 月の地銀・第二地銀の貸出残高が前年同月比 3.8 %増、信金も 2.7 %増(日本銀行、「貸出・預金動向」)と、例月を 1 %以上上回る高い伸びを示していることや、(“正念場”は夏場以降と思われるが)現時点での全国の倒産件数が 237 件( 6 / 10 現在、帝国データバンク)に留まっており、その中にはコロナ前から危うい状況にあった企業も相当数含まれるという実情を見れば、地域金融機関の言い分を信じてもよいような気がする。   その是非はさておき、地域の中小零細企業等への支援は、グローバル&大企業志向のメガバンクや、マネー取引に傾注するネットバンクにできることではなく、コロナショックは、図らずも地域社会における地域金融機関の重要性を再認識させるものとなった。   『地域金融』の理解が十分ではないと、地域金融機関の存在意義も理解できず、地銀不要論(「オーバーバンキング」や「一県一行」などの論説はその典型)に結びつき易くなるのだが、『グローバル金融』花盛りの近年、残念ながら、こちらが主流だ。 ただ、コロナ対応が急がれる中、この論調も一旦、影を潜めている。   超低金利政策が続く中で、地域金融機関の先行きについて景気のいい話は聞こえてこないが、地域経済の活性化に向け、地域金融の中核を担うことになる地域金融機関の役割は大きい。同時に、地域経済の再生・創生が成るか否かは、

年金の「繰上げ受給」「繰下げ受給」について考える

去る 5 月 29 日、年金改革関連法案が成立しました。 パートなどの短時間労働者への厚生年金適用拡大や、 60 ~ 64 歳の間の在職老齢年金制度における減額基準の引き上げ( 28 万円から 47 万円に)に加え、年金受給開始時期の 75 歳までの繰り下げが可能となりました。(いずれも 2022 年 4 月から実施)。 今回は FP の立場から、年金の繰り上げ受給、繰り下げ受給について考察してみましょう。   年金の繰上げ受給と繰下げ受給とは? まず、繰上げ受給、繰下げ受給について簡単に整理しておきます。 老齢年金は 65 歳からの受給開始が原則ですが、実は、現行の年金制度でも、この受給開始時期を 60 ~ 70 歳までの間で変更することが可能で、 65 歳より前に受給を開始することを繰上げ受給、後に受給を開始することを繰下げ受給といいます。 今般の法案成立により、この選択肢が 60 ~ 75 歳までに広がります。 年金の繰上げ受給とは、年金の支給開始年齢を前倒しにすることで、前倒し期間に応じて年金受給額が月あたり 0.5 %減額されます。例えば、 61 歳で繰上げ請求すると、 4 年( 48 か月)前倒しで受給する分、年金は 24 %(= 0.5 %× 48 ヶ月)減額され、 76 %が支給されます。逆に繰下げ支給とは、支給開始時期を後ろ倒しにすることで、その期間に応じて年金受給額が月あたり 0.7 %増額されます。(下表参照) 【支給開始年齢別の支給率(抜粋)】 ※    受給額に応じた税金は考慮しておらず、また端数処理も行っていないため、実際の手取りとは異なります。(以下、全表同様)   繰上げ受給、繰下げ受給のメリット・デメリット 繰上げ受給のメリットは、すぐに年金の受け取りを開始できることです。 無年金期間であるはずの 65 歳まで間に収入を確保できるのはありがたいことですが、繰上げ支給による減額率は、一生涯続きます。 65 歳になったら、本来の支給額に戻るということはありませんので注意してください。 繰上げ受給者の請求理由として最多の「長生きすると思っていない」にはコメントのしようがあり