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7月, 2020の投稿を表示しています

今できるささやかな「地域支援」

黒岩知事のプロ野球観戦から、リーダーの姿勢を考える

昨日、神奈川県の黒岩知事が、「神奈川警戒アラート」の発動日にプロ野球観戦を行っていたことが報じられた。 あらかじめ断っておくと、私は、この件に関して、報道以上の詳細な情報を知らないので、肯定するつもりも批判するつもりもない。 ただ、リーダーの姿勢、あるいは危機管理という視点から、こうした指摘を受けた場合の対処法を考える題材としてとりあげてみたい。事象は違えども、“マネジメント層の言動”が問題視されることは民間企業でもまま発生していることで、対外的事案に限らず、社内で従業員(部下)に対してどのようにふるまう(語る)べきかに通じるものがあるからだ。   結論から言うと、「正直であるべし」。 後ろめたいことがないのなら、堂々と自身の考えを述べ、詫びるべきところがあると思うなら、素直に詫びることだ。一番やってはいけないのは、取り繕うことだ。これをやると、表面的には問題を回避できるかもしれないが、完全に信用を失う。   今般とりあげたケースでいえば、知事自身も言っているとおり、「神奈川警戒アラート」は外出自粛を求めるものではなく、感染防止対策が実施されている場所に行くことは国や県としても問題なしとしているものだ。賭けマージャンをやっていたわけでも、台風や豪雨のさなかに宴会を行っていたわけでもなく、黒岩知事は、何一つ責められるようなことはしていない。 もちろん、「何もこんな時に」と考える人の気持ちもわかるが、“こんな時でも経済を停滞させてはいけない”というのが、今現在の国、および自治体の方針だ。 したがって、知事は、「こういう状況ですから、どんどん行きましょうとは言えませんが、日常生活を取り戻すための一歩も踏み出していかなければなりません。もちろん、その際には、ご自身でもしっかりと対策いただくとともに、ガイドライン順守でお願いします」とでもコメントしておけばよかったのだ。 もしそこに、そうは言っても軽率だったかなという思いがあるのなら「有観客試合の初日という節目と考えたのですが、警戒アラート発動の初日というタイミングを不適切とお考えになった方もおられたようで、その点はもう少し配慮すべきだったと反省しております」と付け加えておけばよかろう。 「何が悪いんだ!」調になってはいけないが、誠実にその真意を伝えることに努めるべきだった。 と

NISAとiDeCo、どっちがいいの?

新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う自粛によって、仕事や収入が激減してしまった人も少なくありません。加えて、働き方自体が大きく変化するかもしれないという状況が現実のものとして捉えられるようになる中、将来の生活設計も大きく見直さざるを得ず、今後の生活や老後資金の準備に不安に感じる人も少なくないようです。 将来への備えとしての貯蓄を増やす手段は、収入を増やすか、生活費を抑えるか、資産運用によって増やすかの 3 つです。残念ながら“必殺技”はありません。 収入については、地道に頑張るのが基本ですが、サラリーマンの間では、働き方改革によって残業が減り、むしろ減収になったという声のほうが多いのが現実です。まだ少数派のようですが、会社が容認しているのであれば、副業によって新たな収入源を作ることも考えるべきかもしれません。 生活費を抑えることについては、一般的には、どこの家庭にも月間支出のうち1割程度の“使途不明金”、端的に言えば“無駄遣い”があると言われていますので、レジに持っていく(支払う)前に、「これって本当に必要か?」を問い直してみることも一つの方法です。ただ、切り詰めていると感じるような生活は、あまり楽しいものではありません。これと同時に FP 等の間では「準固定費」と呼ばれる保険料や自動車関連費、通信費、さらにはサブスクリプション契約など、毎月“勝手に”引き落とされる費用の見直しも行いましょう。 毎月 3 千円の買い物を控えるのはストレスになる可能性がありますが、毎月の保険料を 3 千円減らすことができれば、従来の生活はそのままに同様の結果を得ることができます(もちろん、それで万一の際の保障に問題がないことが前提です!)。 20 年、 30 年という時間を味方にすれば、月数千円の努力も大きな違いになりますが、それでも老後資金ウン千万円が目標だとすると、これだけでは足りません。 やはり「資産運用によってお金を増やす」のは、いまどきの現役世代にとっては必須です。   税制優遇のある運用手段 老後の資金作りに向け、効率的な運用を進めていくためには、税制優遇のある制度を活用するのが得策です。 老後資金を見据えた税制優遇制度としては、

「ドル・コスト平均法」を正しく理解しよう!

「安い時に買って高い時に売る」。 端的に言ってしまえば、投資で儲けるために為すべきことはこれだけです。 ただ、残念ながら、相場の天井や底は誰にもわかりません。 値上がりしていると「今は高いから」、値下がりしていると「もっと下がるかも」…このように、“安い時に買う”に固執し過ぎると、いつまでたっても“買い時”は訪れません。 価格が変動する金融商品を一時に購入すると、高値掴みをしてしまう可能性がありますので、これを恐れて、「思い切って買う」という最初の一歩がなかなか踏み出せないことは、投資をはじめようとする人には良くある話です。 そんな時に有効なのが、『ドル・コスト平均法』を用いて購入するという方法です。   ドル・コスト平均法が推奨される、魅力的な「特徴」 ドル・コスト平均法とは、日々、価格が変わる金融商品を定期的、かつ継続的に一定金額ずつ購入する手法です。なお、ドル・コスト平均法は、投資手法の名前であり、金融商品ではありません。この手法を用いた商品としては、 iDeCo などの「積立投資」がその代表です。 購入金額を一定にすることで価格が高い時には少なく、安い時には多く購入することになるため、一定量ずつ(株数や口数を一定にする)購入するよりも平均取得単価を抑えることができます。(下図参照) 投資において、取得価格が下がるのは無条件に歓迎すべきことで、この特徴が、ドル・コスト平均法が「有益な手法」として推奨される理由の一つでもあります。 加えて、これを長期間にわたって続けると、平均取得単価は平準化(高値でも安値でもない、中間的な水準)されていきます。 どのタイミングではじめても平均取得単価に大きな差が生じなくなってくるわけですから、「今、はじめるか否か」を悩む必要がなくなるわけです。有体に言えば、どうせ最後は大差のない取得単価になるのですから、今の価格が高いか安いかに関係なく、はじめてしまえばよいわけです。   ドル・コスト平均法は、個人の資産形成アプローチにも馴染みやすい 上図からもわかるように、一定量ずつ購入する方法では、購入時点の単価次第で購入価格が変わってしまいます。「毎回〇株(口)」と決めていると

「Go To トラベル」キャンペーンの強行は、愚断か、英断か

「 Go To トラベル」キャンペーンの強行に対する批判が多い。 日々、東京都を中心に、多くの新規感染者が確認される中での「観光促進キャンペーン」は、感染の拡大を助長するものであり、中止、または延期すべきだという意見だ。   まず、筆者の意見を明らかにしておくと、賛成とは言い辛いが“容認派”だ。 本ブログ内 『「コロナショック」は回避できるのか?』 でも記したとおり、中小地域企業は、今、来月あたりが「我慢の限界」であり、これ以上極端な自粛が続けば、事業活動は深刻な局面を迎える可能性が高い。 特に観光、宿泊関係への打撃は強烈で、筆者のヒアリングベースでは、 4 月以降、温泉関連企業の売上げは限りなくゼロに近く、ビジネスホテルもその多くが前年同月比で 10 ~ 20 %の売上げに留まっているなど、通常であれば、完全に破綻だ。総務省の「家計調査」を見ても、 5 月の宿泊費支出は前年同月比 97.6 %減と、筆者周辺の事象が特殊事情ではないことを証明している。 同様の状況は、飲食業やレジャー、エンターテイメントなどの娯楽業にも広がっており、前年同月比 50 %水準の売上げをキープできているところは、多くはない。 ここで、自粛がもう 1 , 2 か月続いたら、観光地の多くはゴーストタウンになってしまうかもしれず、「支援策を打つなら今が最後のチャンス」だろう。 ここ数日の感染状況を見れば、手放しで賛成はできないが、「やるべきなんだろうな…」という思いだ。   実際、当事者である観光地の宿泊施設や飲食、小売店からは、もちろん不安を抱えつつではあるが、ようやく仕事が再開できることへの安堵の声しか聞こえてこない。 また、新型コロナウイルスに関しては、現時点ではワクチンも治療薬もない。加えて SARS 等とは異なり、無症状、あるいは潜伏期間にある人からの感染もある。こうした点から、終息宣言が出る可能性はなく、長期にわたる共存を覚悟すべきと言われている。 つまり、延期しても、「然るべきタイミング」の目途は立たない…。   今般も、一定程度の鎮静化という状況の中で緊急事態宣言(海外では外出禁止令等)を解除し、人が動きはじめたわけであるから、自粛期間中を上回る感染者数が確認されることは、はじめからわかっていたことだ。 そして今、我々

三井住友銀行が開けた「パンドラの箱」

三井住友銀行で、銀行業界初、来店予約サービスの全店展開がはじまりました。 「思い切ったことやるなあ…」、これが、このリリースを見た私の感想です。   私にも経験がありますが、ロビーにお待ちのお客様が増えていく状況というのは、実は、銀行員にとっても大変なストレスです。 「いっぺんにじゃなく、順番に来てくれればいいのに…」。 銀行員なら誰しもが思ったことのあることで、『来店予約』は、もっともオーソドックスな解決策として何度となく話題に上りましたが、実現されることはありませんでした。 その理由は、銀行にはほとんどメリットがないにもかかわらず、リスクが大きいためです。 今日は、これを簡単に説明してみましょう。   銀行の合理化・効率化には寄与しない   予約が可能であれば、“待ち時間”の心配をしなくて済みますから、利用者にとってはありがたいサービスといえるでしょう。 一方の銀行にしてみれば、予約の有無にかかわらず、お客さんは来るわけです。 また、事前に来店客数や手続き内容がわかっていようがいまいが、対応できる人員は決まっています。一般的な支店ではローカウンター担当者は総勢 3 ~ 5 名程度、来店客の来店目的に合わせて「それ用のメンバーを揃える」ことができるほど潤沢な(余剰)人員を抱えているわけではありません。 野球で例えるなら、もとより 9 人しかいないチームなので、相手チームや先発投手がわかっても、同じメンバーで立ち向かう以外の選択肢はないのです。 少人数前提によるオールラウンダー育成を基本とする行員教育の観点を含め、マネジメント的には、予約制が銀行にもたらすメリットは皆無といってもよいでしょう(冒頭記載の混雑に伴うストレスの解消が唯一のメリットでしょうか)。 『来店予約』の導入に対し、合理化・効率性といった“銀行側の都合”といった見解を示す人もいますが、今述べたとおり、それはありません。   『来店予約』によって銀行が負うリスク 逆に、このサービスの開始により、銀行側には 3 つのリスクが生じます。 まず、“順番待ち”に慣れた利用者にしてみれば、「予約がないと〇時間待ち」などと言われる一方で、後から来た予約客がすんなり案内されれば、「割り込まれた」感から憤慨し、苦情を生む可能性があります。

「コロナショック」は回避できるのか?

3 月決済企業の格付け作業が、佳境を迎えています。 金融機関では、与信先(貸出先等)から決算書の提出を受け、これを基に「(企業)格付け」作業が実施され「債務者区分」の見直しを行います。 「債務者区分」とは、企業の信用状態をランク付けするもので、大きくは「正常先」「要注意先」「要管理先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」に分類します。その判断材料は、財務情報だけではありませんが、これが重要要素であることは間違いありません。   金融機関体力の低下は免れない 周知のとおり、緊急事態宣言による自粛の影響をうけ、多くの企業で売り上げが減少しています。もっとも、 3 月決算企業の場合、緊急事態宣言期間を含む 4 , 5 月は未反映ですが、それでも、売上高の減少は 5 ~ 7 %程度、利益水準に至っては 40 %内外の減少が見込まれますし、もとより利益額の小さい中小零細企業では、赤字転落の企業も少なくないでしょう。 また、多額の借り入れを行って当面の資金を確保した企業も多いことでしょうが、これによってバランスシートはかなり傷んだ状態になっているはずです。 いずれもコロナ禍の中ではやむを得ない事態、あるいは正しい行動ですが、会計的には負の事象であることは事実であり、この結果、相当数の「債務者区分変更」、ランクダウンの発生が予想されます。 そして金融機関には、債務者区分ごとの貸付残高(保全勘案後)に応じた「引当金」の計上が求められますので、与信企業の格下げが増えれば、「引当金」の増加は避けられません。 金融機関にとっては、実際の倒産による損失と、この引当金が「与信コスト」と呼ばれる費用になります。長期に及ぶ超低金利政策に伴う収益環境の悪化から、ただでさえ体力が低下している金融機関が、与信コストの増加によってさらにその体力を削がれれば、融資に対して保守的な姿勢をとらざるを得なくなります。 金融機関内部で、 3 月決算企業に対する格付け作業の結論が出るのは今、来月が“ヤマ”ですが、早ければこの段階で、融資姿勢に変化が出てくる金融機関もあるかもしれません。   夏場を過ぎると、窮地に陥る企業が増える! 同時にこの時期は、企業側

資産運用手段としての「年金の実力」

厚生労働省は、 6 月 29 日、令和元年度の「国民年金の加入・保険料納付状況」を公表しました。 これによると、令和元年度分保険料の納付率は、前年度比 1.1 ポイント増の 69.3 %と 8 年連続で上昇しました。 また、保険料の未納分は、納付期限後 2 年以内なら遡っての納付(追納)ができますが、最終納付期限を迎えた平成 29 年度分保険料の納付率は、現年度 66.3 %から 10 ポイント上昇し 76.3 %となりました。こちらも、平成 28 年度分の最終納付率を 1.7 ポイント上回り、過去最高となっています。 保険料未納者への督促の強化が奏功した格好です。   一方、年齢階級別の納付率(下図参照)を見ると、どの年度を見ても 55 ~ 59 歳が最も高く、 25 ~ 29 歳が最低になっています。特に、この階級における 22 ~ 24 歳の納付率からの激減傾向が顕著であり、納付を停止する若者が相当数いることが伺えます。 『国民皆年金』を原則とする日本においては、現在の水準も不十分と捉えるべきところ、若年層に未納者が多いという事実は、見過ごせない問題と言えるでしょう。   若年層の年金に対する意識については、先の話過ぎて実感がわかないということもあるでしょうが、雑誌や Web での年金批判記事の影響もあると考えられます。 今回は、この中にみられる「年金は割に合わない」という点を検証してみましょう。   なお、年金制度の改定リスクについては否定できませんが、「年金制度の崩壊により受取れない」は、現実的ではありません。 話の拡散を避けるため詳説しませんが、年金は、国が支払いを保証している、いわば国家債務です。 MMT 理論を支持するわけではありませんが、円建て国債の発行によって国が破綻することが考えられないのと同様、国が年金(当然「円」です)の支払いができなくなることは考え難いです。   年金の“利回り”ってどのくらい? 年金保険料、ならびに年金額は毎年改定されるため、納付・受取時期の違いにより納付保険料総額や受取年金総額は微妙に異なりますが、ここではいずれも令和 2 年度の保険料、ならびに年金額を基準に計算します。   まず、「支払った金額さえ取り戻せない」との点について考えると、 総保険料相当