平成 27 年に相続税の基礎控除額が引き下げられて以降、「普通の家庭でも相続税の対象になる」ことが広く語られていることも相まって、相続対策への関心は高いようです。 相続対策には、『税額対策』(=税金を少なくすること)のみならず 、『分割対策』(=各相続人にどのように財産を分けるか)、そして『納税資金対策』( =各相続人が無事に税金を支払いその財産を引き継ぐことができるのか)という 3 つの視点があり、特に、莫大な財産があるわけではない「普通の家庭」では、『分割対策』や『納税資金対策』がトラブルの種になることのほうが多いのですが、今日は、『税額対策』に絡む話をしたいと思います。 相続税は、相続財産が大きくなれば、段階的にその税率も上がる仕組みになっていますので、税額を減らす基本的手段は、相続財産そのものを減らすことです。 とは言っても、遺族に財産を残すことを考えているのであれば、無くなってしまっては元も子もありません。 遺産を減らしつつ、相続人に確実に財産を引き継ぐ最も基本的な方法は、生前贈与(生きているうちに財産を譲ってしまうこと)です。 生前贈与は、相続税よりも税率の高い贈与税の対象ですが、親族間の贈与には、いくつかの「特例」が設けられており、これを活用することによって大きく節税することが可能です。 今回はこの中から、 2021 年に期限を迎える「特例」 3 つを取り上げたいと思います。 住宅取得資金の贈与で最大 3,000 万円が非課税に ( 2021 年 12 月 31 日までに行われる贈与が対象) 『住宅取得資金贈与の特例』とは、祖父母や親などの直系尊属から、贈与を受けた年の 1 月 1 日において 20 歳以上の子や孫等が居住用家屋の新築や増改築のための資金の贈与を受ける場合、要件を満たせば、基礎控除額 110 万円に加え、最大 3,000 万円の控除が受けられるという制度です(下表のとおり、住宅の種類によって控除限度額が異なります)。 ※ 本特例 については、これまで、期限を迎えるたびに制度の微修正を加えながら、事実上延長されてきました。高齢世帯にお金が偏っている現状を考えると、改めて延長される可能性はありますが、一応、来年末が期限になります。