スキップしてメイン コンテンツに移動

今できるささやかな「地域支援」

「コロナショック」は回避できるのか?

3月決済企業の格付け作業が、佳境を迎えています。

金融機関では、与信先(貸出先等)から決算書の提出を受け、これを基に「(企業)格付け」作業が実施され「債務者区分」の見直しを行います。

「債務者区分」とは、企業の信用状態をランク付けするもので、大きくは「正常先」「要注意先」「要管理先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」に分類します。その判断材料は、財務情報だけではありませんが、これが重要要素であることは間違いありません。

 

金融機関体力の低下は免れない

周知のとおり、緊急事態宣言による自粛の影響をうけ、多くの企業で売り上げが減少しています。もっとも、3月決算企業の場合、緊急事態宣言期間を含む45月は未反映ですが、それでも、売上高の減少は57%程度、利益水準に至っては40%内外の減少が見込まれますし、もとより利益額の小さい中小零細企業では、赤字転落の企業も少なくないでしょう。

また、多額の借り入れを行って当面の資金を確保した企業も多いことでしょうが、これによってバランスシートはかなり傷んだ状態になっているはずです。

いずれもコロナ禍の中ではやむを得ない事態、あるいは正しい行動ですが、会計的には負の事象であることは事実であり、この結果、相当数の「債務者区分変更」、ランクダウンの発生が予想されます。

そして金融機関には、債務者区分ごとの貸付残高(保全勘案後)に応じた「引当金」の計上が求められますので、与信企業の格下げが増えれば、「引当金」の増加は避けられません。

金融機関にとっては、実際の倒産による損失と、この引当金が「与信コスト」と呼ばれる費用になります。長期に及ぶ超低金利政策に伴う収益環境の悪化から、ただでさえ体力が低下している金融機関が、与信コストの増加によってさらにその体力を削がれれば、融資に対して保守的な姿勢をとらざるを得なくなります。


金融機関内部で、3月決算企業に対する格付け作業の結論が出るのは今、来月が“ヤマ”ですが、早ければこの段階で、融資姿勢に変化が出てくる金融機関もあるかもしれません。

 

夏場を過ぎると、窮地に陥る企業が増える!

同時にこの時期は、企業側にとっても大きな転換点となるタイミングでもあります。

まず資金繰りの面では、コロナ対策で準備した資金が底をつく企業も出てくるでしょう。飲食業や宿泊業では、業界全体で見ても半年前後の資金の確保に留まっていますし、中小零細企業では、業種を問わず、半年分程度の資金しか確保できていない企業が数多くあります。全産業平均の「1.8年分」などの統計(財務省、「法人企業統計」)は、潤沢な自己資金と金融機関からの大きな資金調達枠を有する大企業によって引き上げられているに過ぎません。

3月を起点とすれば、8月が、その6か月目です。売上げ回復には程遠い現状を見れば、夏場以降、「ついに資金も尽きた」という企業が出てくることは避けられないでしょう。

 

自ら事業継続をあきらめる企業も…

ここでの選択肢は二つ。再び金融機関の支援を受け延命を図り再起を目指すか、事業継続をあきらめるかです。

金融機関の支援余力や姿勢に陰りが見える可能性については先ほど触れましたが、企業側にも、自ら事業継続を断念するケースが増えてくることも予想されます。

緊急事態宣言は解除となりましたが、感染再拡大への警戒ムード漂う中での経済活動の再開です。そして、一昨日、昨日と、東京では2日連続で100人超の感染が確認されるなど、恐れていた事態が起こっているのではとの懸念も強まっています。

ワクチンや治療薬がない現状では、「新しい行動様式」という名の“緩やかな自粛継続”も、相当部分、受け入れざるを得ず、個人消費や生産活動が『回復』を実感できるまでになるには、どのぐらいの時間が必要なのかは、まったく見当がつきません。

こうした中で、「自粛要請が解け、仕事ができるようになれば何とかなる」と期待していた事業者の中には、「こんな状況が続くようではやっていけない」と考える人が出てきてもおかしくありません。

実際、先行きに対する不安から、泥沼に陥る前に会社を畳みたいという申し出もあるようです。(根底には、後継者不在の問題もあるものと思われますが…。)


 

もっとも、「新しい行動様式」を真に受け、愚直に実行しようとすれば、観光、レジャー、エンターテイメント、飲食などは、今後、ビジネスとして成り立つのかさえ危ぶまれます。

これらの業界において、“密集を避ける”ためには、売上げに直結する「客数」を減らすしかありません。学者さん方は「それでも事業を継続できるような工夫」などと簡単に言いますが、「売上げが〇割減になっても大丈夫な工夫」など、おいそれとできるはずがありません。IT活用を含めた業務の効率化は、これまでも常に取り組んできた課題であり、突如、画期的な手段が見出せるとも思えません。

こう言ってしまうと身も蓋もないのかもしれませんが…、そんな無理難題に取り組むより、感染症の専門家の方々に「密状態にあっても感染リスクの低い行動様式」を考えてもらうほうが、まだ現実的ではないかとさえ思ってしまいます。

 

これからが「コロナショック」回避の“正念場”

ともあれ、貸す側、借りる側、双方の事情を考えると、今年の倒産件数は7年ぶりに1万件を超える(帝国データバンク)との予測に、大袈裟感はありません。

経済面からは、本当の「コロナショック」は、これからかもしれません。

苦しい台所事情は理解しつつも、今こそ、金融機関の真価が問われる時です。

もちろん、金融機関の庇護、犠牲の上にしか生きられない“ゾンビ企業”を生み出すことなど、誰も望んでいません。金融機関には、感染症に立ち向かう医療関係者に負けない使命感をもって、顧客企業との早期、かつ綿密(=この“密”は必要な密です!)なコミュニケーションを図り、真の生き残り果たせる企業を増やすため、お金に留まらない再生への道筋を共に考える支援を期待したいものです。


コメント

このブログの人気の投稿

今後のマンション価格はどうなる? ―「マンション・バブル」の崩壊はあるのか?―

  全国のマンションの平均価格は上昇を続け、ついに首都圏の新築マンションの平均価格は、過去最高値 (6,123 万円= 1990 年 ) を超える 6,260 万円に達し、「不動産バブルの再来」とも言われています。 このような状況の中でもマンションを購入している人たちからは、将来のマンション価格の上昇を見越して、「いまのうちに購入しておきたい」という声も聞かれます。 これはまさに、“買うから上がる。上がるから買う”という、バブル期に土地や株が高騰した時の状況に酷似していますが、今後のマンション価格はどうなるのでしょうか。   マンション価格の推移 マンション価格のこれまでの推移を見てみると、下表のとおり、 2008 年のリーマンショックにより、一時、下落したものの、近年では、新築・中古ともに上昇傾向にあます。     住宅価格の上昇の中でも、マンション価格の上昇は突出! 日銀の異次元金融緩和政策の下で住宅ローン金利も記録的な低金利となっており、「住宅購入には絶好のタイミング」と言われています。「不動産価格指数」(国土交通省)からも、近年の住宅価格は着実に上昇を続けており、旺盛な需要があることがわかります。 その中でも特筆すべきがマンションであり、戸建住宅等と比べるとマンション価格の上昇には、目を見張るものがあります。 低金利を追い風に住宅取得需要が増加する中でも、特にマンション価格が大きく上昇した理由としては、以下が考えられます。 ・建築資材や人件費などの建築コストの上昇 ・都市部への人口集中に伴う需要の増加 ・相続対策や資産運用手段としての需要の増加   建築コストの上昇は、マンションだけに影響するものではありませんが、戸建て価格の相当部分は土地代であり、都市部ではその過半を占めることも少なくありません。これに対してマンションは、その価格の大半は建物(建築)価格であるため、建築コストの上昇の影響をより大きく受けるわけです。   次に、都市部への人口集中による需要の増加です。 コロナ禍以前、住居に関して「都心回帰」の動きが注目されていたこと...

日本は、本当に「オーバーバンキング」なのか?

緊急事態宣言の解除から 3 週間が経過しようとしている。   新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う自粛によって凍りついてしまった経済活動の再開に向けた動きが、今、全国ではじまっている。その中で、地域の中小零細企業を支えるべき地域金融機関の存在意義が、改めて問われている。   コロナショックでわかった地域金融機関の重要性 ここまでも、地域金融機関サイドからは、「この先の展望も不透明な中、正直、片目、両目をつぶった緊急融資も相当やってきた」といった、地域の企業等のために出血覚悟の対応を行ってきたとする声も聞かれる。一方、メディアなどでは、今般のような事態における支援は政府系金融機関等の役割との姿勢から、「腰が引けていて、その対応は十分ではない」などの論評も見られる。 どちらが真実なのか、現場に足を運ぶことができない今の状況の中では検証する術もないが、 5 月の地銀・第二地銀の貸出残高が前年同月比 3.8 %増、信金も 2.7 %増(日本銀行、「貸出・預金動向」)と、例月を 1 %以上上回る高い伸びを示していることや、(“正念場”は夏場以降と思われるが)現時点での全国の倒産件数が 237 件( 6 / 10 現在、帝国データバンク)に留まっており、その中にはコロナ前から危うい状況にあった企業も相当数含まれるという実情を見れば、地域金融機関の言い分を信じてもよいような気がする。   その是非はさておき、地域の中小零細企業等への支援は、グローバル&大企業志向のメガバンクや、マネー取引に傾注するネットバンクにできることではなく、コロナショックは、図らずも地域社会における地域金融機関の重要性を再認識させるものとなった。   『地域金融』の理解が十分ではないと、地域金融機関の存在意義も理解できず、地銀不要論(「オーバーバンキング」や「一県一行」などの論説はその典型)に結びつき易くなるのだが、『グローバル金融』花盛りの近年、残念ながら、こちらが主流だ。 ただ、コロナ対応が急がれる中、この論調も一旦、影を潜めている。   超低金利政策が続く中で、地域金融機関の先行きについて景気のいい話は聞こえてこないが、地域経済の活性化に向け、地域金融の中核を担うことになる地域金融機関の役割は大き...

『地銀再編』は、イコール『統合』ではない(その1) ―「一県一行」なら、日本の金融は崩壊する―

  自民党総裁選挙への出馬表明の会見において、最有力候補である菅官房長官が、地域銀行の数は多いとの認識を示し、再編を示唆していた。 金融行政に明るいとは言えない菅氏からのこのような発言は、政権内にも、足元の国民生活を顧みないグローバル市場主義者の声が蔓延していることの表れであろう。 『日本は、本当に「オーバーバンキング」なのか?』 でも記したとおり、日本の金融機関数は、諸外国比、むしろ少なく、金融閉塞問題の原因は“数”ではなく、その“質”だ。 多様化するニーズに対応し得る『金融立国』を目指すためにも、「オーバーバンキング論」とともに、世間に蔓延する「一県一行論」に対し、異論を述べさせていただきたい。   「一県一行主義」の目的は、徹底した金融統制 現在、概ね一都道府県にひとつの「第一地銀」が存在する。これは、かつて政府が「一県一行主義」を掲げ、銀行の整理統合を行ってきた名残だ。 昭和初期、支那事変を経て 太平洋戦争へと向かうことなる時代背景の中で、政府には、戦費の調達と国債の円滑な流通のための徹底した金融統制が求められるようになり、その実現手段として「一県一行主義」が掲げられた。 要するに、数多ある銀行に自由な経済活動を許していては政府の思い通りにはならないため、銀行の事業基盤を確立してやることと引き換えに、政府の言うことを聞く(聞かざるを得ない)構造を作りたかったのだ。この政策は戦時下も継続され、150を超えていた銀行数が終戦時には 61 行、これが現在のメガバンク、第一地銀としての歴史をつないでいる。 しかし戦後の復興期、これまで国民からの資金の吸い上げを目指していた立場から、今度は全国各地に復興資金を流通させる必要が生じると、これではまったく足りなかった。 そこで、いくつかの銀行を設立したり、無尽会社を相互銀行(現在の第二地銀)に転換したりと、銀行を増やすことに力を入れた。 それでも供給者不足は解消されず、戦後 20 年を経た高度経済成長期に至ってもなお、大企業にしか資金が提供されない(中小企業や個人は相手にされない)のが実態で、これを補完するために、地域内で資金を融通する組織としての信用金庫や、業界団体や職域内で資金融通を行う信用組合が次々に誕生し、中小企業や個人を支えることとなった。 以上の...