まずは、今般のロシアによるウクライナ侵攻は、断じて許される行為ではなく、一刻も早く、平和的手段によって解決されることを望んでいることを明らかにしておきます。
そのうえで…。
私は「親ロシア派」ではないので支持はしませんが、ロシアが、国際社会の中で大きな存在感を示し続けるうえで、NATOの拡大は、何としても阻止しなければならない問題であったことはわかります。旧ソ連の勢力下にあったバルト三国のNATO加盟など、NATO勢力の東方拡大に焦り、ウクライナまでが西側につくことを阻止したかったのは当然でしょう。
だからといって武力行使は許されませんが、「ウクライナの中立化と非軍事化」を掲げて事を起こしてしまった以上、最低限、ウクライナが今後もNATOには加盟しないとの確約が得られるまで、プーチンは“引けない”でしょう。
したがって、プーチンに矛を収めさせるには、ウクライナにNATO非加盟を約束してもらうのが一番なのですが、ウクライナとしては、他国の武力行使によって自国の政策判断がゆがめられることは、独立国家として容認できるものではなく、実際「我々は敗北しない(=力によって要求をのまされることはない)」と繰り返し宣言しています(当然ですね)。
また、本音ではロシアを挑発することになるのがわかりきっているウクライナの加盟には積極的ではなかったNATO側にとっても、この軍事侵攻によって、ウクライナの加盟見送りは「力による勢力図の変更」に屈したことになってしまうというおかしな状況が生まれてしまいました。ウクライナのNATO加盟阻止を狙ったロシアの侵攻が、逆にそれを後押しすることになってしまったわけです。
いずれにしても、「次は台湾」などともいわれているとおり、“力による勢力図の変更に屈した”という前例を作ることのできない西側諸国としては、プーチンの要求の核心部分を受け入れることはできません。
「落としどころ」がないのです。
各国の政治的努力によってこの難題を解決してもらうことを願うしかありませんが、これと並んで問題になるのがロシアの今後です。
この先、何らかの合意を得てウクライナ問題が解決しても、蛮行を行ったプーチン政権下でのロシアが、何食わぬ顔で国際社会に復帰できる見込みはありません。
大国ロシアの北朝鮮化も、絵空事ではないのです。
しかし、ロシアは、石油や天然ガスなどのエネルギー資源、パラジウムなどの鉱物資源、穀物や水産物などの食品生産国として、現在の世界経済の中で容易には代替できない地位を築いており、ロシアとの関係を断つことは、日本を含む多くの国や企業にとっても相当な痛みを伴うことになります。また、ロシアは国連の安全保障常任理事国であり、かつ大量の核保有国ですから、「平和」の視点からも、ロシアの国際社会からの孤立、排除は得策ではありません。
こうして考えると、論理的にはまったく落としどころの見えない軍事侵攻を終了させ、ロシアが国際社会に復帰する道は、100年ぶりの『ロシア革命』により、プーチン政権が崩壊し、新生ロシアが生まれる以外に考えられない…のではないでしょうか。
ただ、こんな単純な図式は、プーチンだってわかっているはずです。
いくら中国が味方に付いてくれると言っても、中国に依存して生きることは、“ソビエト連邦の復活”を望むプーチンの想いとは違うはずです。中国にとっても、ロシアは“居候”にしては大きすぎる存在であり、中国自身の国際社会における評価のためにも、いつまでも擁護し続けることはできないでしょう。
だからこそ、今後、プーチンが何をするかわからないという怖さがあります。
もはや自らの将来はない中で、潔く身を引いてくれればよいですが、現状、その見込みは薄いです。大国ロシアを道連れに玉砕覚悟の「ブチ切れ状態」にあるのだとすれば、核の脅威も決して「まさかの事態」ではなくなります…。
そんな最悪のシナリオだけは、絶対に回避できることを、切に願います。
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