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今後のマンション価格はどうなる? ―「マンション・バブル」の崩壊はあるのか?―

 全国のマンションの平均価格は上昇を続け、ついに首都圏の新築マンションの平均価格は、過去最高値(6,123万円=1990)を超える6,260万円に達し、「不動産バブルの再来」とも言われています。

このような状況の中でもマンションを購入している人たちからは、将来のマンション価格の上昇を見越して、「いまのうちに購入しておきたい」という声も聞かれます。

これはまさに、“買うから上がる。上がるから買う”という、バブル期に土地や株が高騰した時の状況に酷似していますが、今後のマンション価格はどうなるのでしょうか。

 

マンション価格の推移

マンション価格のこれまでの推移を見てみると、下表のとおり、2008年のリーマンショックにより、一時、下落したものの、近年では、新築・中古ともに上昇傾向にあます。

 


 

住宅価格の上昇の中でも、マンション価格の上昇は突出!

日銀の異次元金融緩和政策の下で住宅ローン金利も記録的な低金利となっており、「住宅購入には絶好のタイミング」と言われています。「不動産価格指数」(国土交通省)からも、近年の住宅価格は着実に上昇を続けており、旺盛な需要があることがわかります。

その中でも特筆すべきがマンションであり、戸建住宅等と比べるとマンション価格の上昇には、目を見張るものがあります。

低金利を追い風に住宅取得需要が増加する中でも、特にマンション価格が大きく上昇した理由としては、以下が考えられます。

・建築資材や人件費などの建築コストの上昇

・都市部への人口集中に伴う需要の増加

・相続対策や資産運用手段としての需要の増加

 

建築コストの上昇は、マンションだけに影響するものではありませんが、戸建て価格の相当部分は土地代であり、都市部ではその過半を占めることも少なくありません。これに対してマンションは、その価格の大半は建物(建築)価格であるため、建築コストの上昇の影響をより大きく受けるわけです。

 

次に、都市部への人口集中による需要の増加です。

コロナ禍以前、住居に関して「都心回帰」の動きが注目されていたことをご記憶されている人も多いでしょう。現役世代のみならず、かつて郊外にマイホームを購入したシニア世代においても、商業施設の充実などの生活利便性を求めて都会暮らしを選択する人が少なくありませんでした。こうした圏内外からの転居等にあたり、土地付き一戸建てに比べれば安価で、管理負担も小さく、セキュリティ面での優位性もあるマンション需要の増加が、価格を押し上げているわけです。

コロナ禍を経て、郊外需要も増加傾向にあるのは事実ですが、現在のところ、都心人気に顕著な衰えは見られません。

 

こうした傾向は、首都圏や近畿圏以外でも同様で、実際、名古屋圏、福岡圏、札幌圏を含む5大都市圏のマンション価格はいずれも上昇しています。

 

ただし、下表、中古マンションの取引状況(202112月)からも明らかですが、その価格や取引量において、首都圏とそれ以外の地域の差は歴然です。


そもそもマンションは、限られた土地の有効活用を目的に作られたもので、都市部特有の建築物と言ってよく、特に日本の場合、『マンション市場』とは、おおよそ『首都圏マンション市場』のことを意味します。

直近10年の新築マンションの供給戸数を見ても、全国の供給戸数の半分が首都圏、1/4が近畿圏、これ以外の地域が束になってようやく1/4を占めるに過ぎません。

つまり、都市部への人口集中とは、各経済圏内における中心都市への人口集中という意味合いも皆無ではありませんが、首都圏への人口集中と同義と言っても過言ではないのです。

首都圏の利便性の高いエリアで戸建てを考えれば、「1億円越え」は確実ですから、首都圏の住まい探しにおいて、マンション以外の選択肢はないに等しいのです。

  

こうした実需動向から、相続対策や資産運用目的の不動産投資も、首都圏マンションを対象とする案件が中心となっていることが、首都圏マンションの需要をさらに高めることになっています。

 

相続対策や資産運用目的の不動産投資がマンションに向かうことになった理由を、簡単に掘り下げてみます。

平成27年に相続税法が改定され、基礎控除額が大きく引き下げられたことで相続税の課税対象者が拡大され、税負担も大きくなりました。このため、額面通りの評価となる金融資産を、その評価額が実勢価格を下回ることが多く、条件次第では軽減措置の適用も受けられる不動産で所有することによって課税対象額の引き下げを図る“節税対策”が増加しました。

節税対策では、評価額の引き下げが目的ですから、実勢価格と評価額の乖離が大きいマンションがその対象になりやすかったわけです。また、節税対策の場合、長期保有を目指していませんので、将来的な売却を考えれば、需要のある都市部で保有することが望まれますが、都市部で土地を購入するとなると選択肢が限られるうえに価格も大きくなりすぎることも、マンションが選択されやすくなった理由です。

また、超低金利政策の下で魅力的な運用商品を見出せない中で、価格変動の大きい株式等の相場商品に怖さを感じている人を中心に、実物資産を背景に安定した家賃収入を得ることができる不動産投資は、老後の収入源としても注目されることになりました。

ここでも、確実な賃料収入を得るためには、賃借需要が大きく、比較的安価な投資が可能な都市部のマンションが選ばれやすかったのです。

 

「マンション・バブル」崩壊が懸念される理由

今後のマンション価格について、販売会社や一部の専門家からは、「下がる要素がない。今後は人気の高い高額物件の供給が増えると考えられるため、さらに上昇するだろう」といった強気の発言が多いようですが、本当にマンション価格は上昇を続けるのでしょうか?

 

実は、私は、短期・中期・長期の3つの視点から、「マンション・バブル」がはじける日はそう遠くはないかもしれないと危惧しています。

 

まず、短期的には、マンション価格が現在の水準から上昇することになれば、マンションの取得そのものをあきらめる人も増え、需要が大きく減退することが考えられます。


厚生労働省の『賃金構造基本統計調査』によれば、全体の年収中央値は433万円、男性に限定しても532万円です。

下表のとおり、年代別に見ても、中心的なマンション購入者層である30代、40代の年収の中央値は600万円前後であり、首都圏の新築マンション平均価格は年収の10倍以上、中古マンションでもそれに近い水準に達しています。


あくまで平均価格、年収の中央値という統計値に基づく一般論に過ぎませんが、すでに日本人の2人に1人にとって、現在のマンション価格は、その購入が生活破綻を招く危険水域に達していると言わざるを得ません。また、給与・所得水準が伸び悩む中で、老後資金も自分で準備しなければならない現役世代であることを考慮すれば、さらに多くの人にとって、「購入をためらう水準に達している」と言えるでしょう。

 

次に中期的な視点では、生産緑地の開放がマンション供給量の増加につながり、価格の下落を招く可能性があります。


生産緑地とは、『生産緑地法』(1992年施行)に基づいて国や自治体が指定した「都市部の農地」のことで、生産緑地に指定されると、農地として利用することを条件に、30年間、固定資産税に優遇措置が適用されるというものです。

この優遇措置が期限を迎えるのが、2022年以降、今年からなのです。

今後、優遇措置の終了に伴う税負担の増加や、農業従事者の高齢化を理由に土地を手放す所有者が増えることが予想されています。こうした土地は、農地として利用されていたぐらいですから、まとまった大きな土地であることが多く、宅地化すれば大型マンション用地となり得るもので、多くのディベロッパーが狙っています。

もしこうした事例が数多く出現すれば、土地、あるいはマンションの供給量は大きく増加し、都市部の地価やマンション価格が下落する可能性もあります。

 

そして最後に長期的視点です。

少子高齢化に伴い、今後、日本の人口は減少が予想されています。その程度や進行のスピードに地域差はあるでしょうが、マクロ的な予測では、2050年には、人口、世帯数ともに現在の23程度になるとされていますから、住宅市場は買い手市場、借り手市場になるでしょう。

一方で、マンションの居住者の高齢化に伴い、今後は、相続などで取得したマンション、あるいは高齢の所有者が施設に移り不要となったマンションが、次々に中古マンション市場に出てくることになるでしょう。

また、近年、値段の高い首都圏の人気エリアにあるマンションでは、投資用に外国人が購入するケースが目立つとのことですが、投資目的の取得ですから、彼らが取得した“人気マンション”もいずれは中古市場に出てくるはずです。

 

人口・世帯数の減少に伴い需要が減少していく一方で、中古マンションの供給量は大きく増加すると考えられますから、価格は下落していくことになるでしょう。

 

いま、マンションは買い時?それとも売り時?

現在のマンション価格は過去最高水準にあり、「これ以上あがったら、普通の人には買えない」状況ですから、売り手にとっては千載一遇の好機と言えるでしょう。

マンションの価格は、立地や管理状況次第では購入価格を上回る可能性もありますが、一般的には、築年数の経過とともに下落しますから、売却を遅らせると、どんどん値下がりしてしまうかもしれません。特に、建築後10年以上経過しているマンションは、「この機を逃したら売れなくなる」ことも考えられます。

こうした視点で見ると、いま、マンションは売り時であり、買い時ではないのかもしれません。

しかし、終の棲家として、いずれは購入するつもりであるのなら、現在の住宅ローン金利は、条件によっては1%を下回ることもあるなど、「これ以上、下げる余地がない」水準にありますから、ローンを組んでマンション購入をしたい人にとっては、まさに「絶好のチャンス」です。現在の日本経済の状況を見れば、近々に金融政策が変更される可能性は極めて低いため、あわてる必要はありませんが、現在賃貸暮らしをしている人の場合、迷っている間も家賃の支払いは続きます。

自身、そして家族のライフプランをしっかりと見据えたうえで、現在の資産・収入状況で無理なくローンを返済できるのなら、思い切って購入を決断するのも一考でしょう。

 

価格(資産価値)が落ちにくいマンションの特徴

マンションの購入にあたり、「将来的な資産価値」が気になる人も少なくないでしょう。

価値が落ちにくいマンションの特徴としては、以下4点があげられますので、物件探しにあたっては、これらを踏まえて行ってみることをお勧めします。

・快適な暮らしを実現できる地域にある(周辺環境や利便性)

・物件の管理状況が優れている

・災害の少ない土地に建っている(または十分な災害対策がなされている)

・「新しい生活様式」に適した間取りや設備が充実している

 

マンションの資産性を考えるうえで重要なのは、立地と管理状況です。

まずは立地。ここに説明は不要でしょう。

将来的な売却も視野に入れるのであれば、「主要・人気駅から徒歩8分以内」が理想です。

また、これまでは都心の物件に人気が集中していましたが、リモートワークや在宅勤務が推奨される昨今、郊外需要も増加してきています。したがって、駅近とは言えなくとも「緑に囲まれた環境」や、「商業施設や文化施設の充実」など、“快適な住環境”につながるアピールポイントを持つマンションも、将来的に資産価値を維持できる可能性は高いと言えます。


次に、管理状況です。

マンションの躯体や設備は手入れをしなければ劣化が進み、壊れるものばかりです。信頼のおける管理会社による適切な管理がなされていることも、資産価値を維持できるか否かを考えるうえで、重要なポイントです。

また、管理組合がしっかりと機能しているかどうかも重要です。

管理組合や区分所有者集会には、「正直、面倒で関わりたくない」という人も少なくないと思いますが、実際の事例を見ても、管理組合が機能しているか否かが、マンション全体の資産価値に与える影響は、相当大きいと言えます。

マンションは共同所有物件です。大きく言えば、共同所有者とは運命共同体にあるわけで、その資産価値保全に向けて住民が協力的であるか否かは大変重要です。自分の資産を守るためにも、この点は気にかけておいた方がよいでしょう。

 

また、マンションに限らず、不動産を購入する際には、その地域のハザードマップや災害履歴を調べることも忘れてはなりません。

地震や火災の発生を想定した対策が不十分なマンションは論外ですが、台風による水害で、タワーマンションの地下電気室が浸水して停電が発生し、エレベータや給水ポンプなどのライフラインが機能停止した事例があったことは、ご記憶に新しいことと思います。

この例からもわかるとおり、マンションを含む不動産の購入にあたっては、災害の可能性が低い地域であることがベストですが、次善策として、当該地域で起こり得る災害に対する対策が十分になされているのかを確認しておくことが必要です。

 

そして最後に、今後のマンション購入では、「新しい生活様式」への対応も見過ごせないものとなっています。

例えば、リモートワーク(会議)用のスペースがある、子どもの様子を見ながら仕事ができるような間取りや設備が備え付けられているなど、新しい生活様式に適した物件への関心も高まっています。また、在宅時間が増えたことに伴い、一人になれる場所を確保できる部屋数を有する物件や、広いバルコニーのある物件も人気です。

専有部分にこのようなスペースがない場合でも、リモートワークに適したスペースが利用できる、小さな子供を安心して遊ばせることのできる場所がある、リラックススペースが用意されている、さらには、ご両親や友人等が遊びに来た場合に借りることのできるゲストルームが備えられているなど、今後は、共用部の充実もマンションの資産価値を左右するポイントになってくることでしょう。

 

まとめ

マンション価格はコロナ禍にあっても上昇を続けていますが、10年後、20年後を考えた場合、「高い人気を誇り資産価値を維持し続けられるマンション」と、人口・世帯数の減少に伴い「売るのも貸すのも難しいマンション」に二極化していく可能性は高いでしょう。

しかし、利便性に優れ、設備も充実したマンションは、すでに一般的なサラリーマンには「とても手が出せない」価格となっていることも少なくありません。

これからマンションを購入するなら、資産性に拘ることなく、「終の棲家としての役割を担ってくれればいい」といった割り切りも必要ではないでしょうか。

大上段から、資産としての価値を否定するわけではありませんが、今後、住宅は、住まいとしての快適性にのみ価値を求めていくべきで、資産価値に大きな期待をした物件の購入は、リスクが大きいのではないかと思います。

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